Free Style : Dream Time |
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Semi-final 第1戦、ドイツ対イタリア。
ドイツ代表 0-2 イタリア代表 得点者:'119 グロッソ(イタリア)、'120+ デル・ピエロ(イタリア) 劇的!劇的!劇的! 今、思いつく言葉はこれしかない。 スコアレスドローでPK戦を迎えると誰もが思っていた。 少なくとも119分までは… The Axis Powers Game、すなわち「枢軸国」同士の試合となった準決勝の第1試合。 俺が試合前に気になっていたのは楽観的なドイツの姿だった。 「イタリアには勝てる」 という論調がマスコミや国民の間で大勢を占めていたらしい事に違和感を覚えた。 「イタリアのこれまでのゲームを見て何も感じなかったのか?」 難敵アルゼンチンを破り、優勝候補の最右翼ブラジルとイングランドが消えた事でドイツ人はすっかりと自国の優勝を確信してしまっているかのようだった。 俺自身はイタリア贔屓な事もあり、これらの開催国(というか世界)のドイツ有利という声を素直には受け入れられなかった。 今大会のアッズーリはこれまでのように、前評判の高さを裏切ってあっさりとコケてしまう脆いチームじゃない。 「攻撃的」という仮面をかぶった鉄壁の守備力を誇るカテナッチョ軍団にリッピという「知性」を加えた非常に危険なチームだと思っていた。 振り返ると、予選リーグでは格下アメリカにまさかのドロー。 決勝トーナメントでも後進国オーストラリア相手に、ロスタイムのPKによるゴールで辛勝。 このゲームでは(4年前と違い)審判に助けて貰ってギリギリベスト8進出したとまで云われた。 確かに爆発的な強さは感じられない。 選手たちもこれまでの「青」を背負ってきたスタープレイヤーたちに比べると小粒だ。 だが、よく思い出して欲しい。 イタリアはこれまで1失点しかしてないし、それはDFザッカルドの得点、つまりはオウンゴールだ。 大会前のイタリアはかつてないほどの攻撃的なチームだと評された。 だが蓋を開けてみると、ここまでのイタリアの強さはやはり堅守、粘り、そして危機の3つがキーワードになっているように思える。 守備の堅さは今更云うに及ばず、だ。 先程も書いたようにイタリアはまだ1点も「相手」に奪われていない。 これはもうイタリアの伝統というか、彼らの血に、DNAに、組み込まれた一種の命令みたいなものではないか。 とにかく選手たちは失点する事を極端に怖がりボールを追い、相手を掴んでも止める。 それでもドイツやフランスほどの守備における「強さ」は感じられずに時々危ないシーンを迎えるが、最後にはDFが、そしてキーパーが身体を張って防ぐ。 Catenaccio という単語でしか説明のしようがない。 そして90分間(時に120分間)我慢してきた「モノ」を少ないチャンスで爆発させるかのようにゴールを挙げる。 それはまさにイタリアの伊達男たちが一瞬のOrgasmを迎えるシーン。 ドイツに「ゲルマン魂」があるなら、イタリアにはこの「射精」的信念があるように思えてならない。 アッズーリは殴られ続けても耐えられるタフさと、最後には復讐を果たせる(目的を完遂できる)「一発」を兼ね備えている。 それ故に「退屈なサッカー」と批判され続けてもイタリアに、そしてアッズーリに魅了されるファンたちがいるのだと思う。 3つ目の危機というのは、ご存知のようにセリエAの八百長疑惑。 ドイツにおける熱狂の裏側で今なおリアルタイムで継続中のこの問題。 大会前のイタリアに対する期待度の低さは、これが最も大きな要因になっていた。 つまりは、これらの渦中のクラブに所属する(した)選手や監督たちにとってこの問題が与える悪影響が大きすぎてアッズーリは早期に敗退してしまうんじゃないかという懸念。 俺自身も、 「鬼が出るか蛇が出るか」 と、半信半疑だった。 ただ、これをイタリアサッカー界の歴史的な「危機」として、選手たちが発奮材料にできればイタリアはあるいは優勝してしまうんじゃないかと思った。 実際そういう予感めいたものがあったのだが、今となってしまえば「結果論」なので強くは云わないでおこう。 ただ、以前のポストでイタリアの優勝を予想していた事だけはアピールしておく。 (決勝トーナメント以降の組み合わせを間違えてしまっているのは、お恥ずかしい点) さて話をゲームに戻そう。 試合内容自体は五分五分だった。 ドイツはやはり強かったし、決して諦めなかった。 1対1での優位性という意味ではドイツの方に少しだけ分があった。 やはり身体の大きさといい、激しいあたりといい、さすがのイタリアも苦戦した。 ペースという意味ではお互いが交互に握っていたような展開だったが、なかなか決定的なところまではいかない。 イタリアのお得意の時間の進み方(使い方)ではあったが、過去のアッズーリと違う点は攻撃にアクセントをつけられるタレントが中盤にいる事。 それがトッティ王子であり、影の司令塔と云えるピルロだった。 結局のところ、イタリアとドイツを分けた点もそこにあったと思う。 トッティの活躍はゴールへは繋がらなかったが、時々魅せるヒラメキは確かにこれまでのイタリア人とは少し違ってみえた。 ピルロは個人的にイタリア一押しの選手で、若い頃から好きだった。 トップ下の位置からボランチへと下がって本当に「一流」の選手に成長したなと思う。 それはピルロの才能だけではなく、やはり彼をサポートする周りの存在(特にガットゥーゾ)なくしては語れない。 ドイツには中盤の要としてバラックという素晴らしい皇帝がいたが、彼とピルロのような選手には決定的に違う点がある。 それを説明するのは難しいが、やはりイタリア語で云うと Fantasista という事になるだろうか。 ファンタジスタの存在。 イタリアの決勝点。 つまり延長後半14分の1点目。 ロスタイムを入れても、あと数分守りきればPK戦突入の場面。 ピルロはその直前にも惜しいシュートを放っていたが、やはり彼は他の選手たちとは違った。 グロッソへ出したスルーパス。 あの瞬間こそ、彼がファンタジスタというものに近い存在である証明だったかも知れない。 決めたグロッソも勿論素晴らしかったが、あの局面、時間帯であのパスが出せるという事。 サッカーの神の抱擁か、はたまた幸運の女神のくちづけか。 ピルロは選ばれて、バラックは選ばれなかった。 延長になってドイツよりも少しだけイタリアの選手たちの方が元気にみえた。 それは交代で入ってきた選手たちの差だったかも知れない。 ドイツのシュバインシュタイガーもオドンコールもかなり利いていて、いつドイツが得点を挙げてもおかしくなかった。 しかし段々と時間が進むにつれ、延長の終盤頃には彼らは孤立していたように思えた。 イタリアの方はジラルディーノ、イアクィンタがピルロたちと絡んで積極的にゴールへ向かった。 PK戦では分が悪いという思いもあっただろう。 俺も頭の中で、 「PKを決めても誰も覚えていないが、外したら誰もが忘れない。」 というある選手の遺した言葉がよぎっていただけに嬉しかった。 サッカーはホイッスルが鳴るまでは終わらない。 交代選手たちの中には、さらに彼がいた。 アレッサンドロ・デル・ピエロ。 彼のゴールでドイツ国民は完全にWCというお祭りに「終わり」が来た事を知った。 残りはロスタイムを残すのみ。 1点でも十分に守りきれる時間帯であり、またイタリアという国からしてみれば1-0はお得意のスコアのはずだ。 それでもデル・ピエロはゴールした。 やはり彼もまたファンタジスタと呼ばれる資格のある人間だった事を大舞台で証明してみせた。 リッピはこのゲームの中でトッティとデル・ピエロを両立させた。 トッティに代えてデル・ピエロを投入するものだと思っていたから、いい意味で当てが外れた。 試合展開から考えて当たり前の事のように映るかも知れないが、これまでのイタリアの指導者たちはなかなかできなかった事だ。 0-0から得点を獲りにいく姿勢が結局は2得点を生んだ。 イタリアの勝因、ドイツの敗因。 そんなものは一言で語れるわけがないし、もし語っている人間がいればそれは嘘吐きだから信用しない方がいい。 ドイツもイタリアもGKを含めて守備陣の能力、集中力が本当に素晴らしいものがあった。 特にレーマンは今大会通じてその実力をみせた。(まだ3位決定戦があるが) 人気者のカーンからポジションを奪った事で賛否両論あったが、安定感や俊敏性という面ではカーンよりも上であると断言したい。 そもそもカーン様の事は個人的にそれほど優れた「キーパー」ではないと昔から思っていた。 だが、主将として、そして選手としての存在感の大きさではレーマンとは比べられない偉大な人であった事も最後に云っておきたい。 おめでとう、アッズーリ。 ファイナルの相手はポルトガルかフランス。 個人的にはイタリアとフランスの対決が見たい。 ドイツはもう一度自分たちを見つめなおして欲しい。 前回大会、そして今回の大会含めてブラジル以上に健闘したし、本当にドイツは「負けない」チームだと思った。 だが優勝するには選手の質という意味で若干足りない物があったとも感じた。 監督含めて「若い」チームだけに今後も帝国はその歩みを止めないだろう。 以下、この試合を見てて思った事とか。 つまらないので飛ばしてください。 日本のお話1。 連日のように延長戦に入る今大会のセカンドラウンドで、必死に走る彼らの姿を見るにつけ、今日本でもオシム爺の「走るサッカー」が注目を浴びているように、やはりサッカーは走らないと勝てない事に気づかされる。 精神力とスタミナ、そして身体の強さ。 これらは技術と同じぐらいか、もしかするとそれ以上に現代サッカーでは重要な要素だが、日本にはどれも足りなかった。 (世界クラスとかいう一部選手のテクニックでさえ怪しいものだ…) その点、ドイツもイタリアもよく走るし、諦める事もしない。 彼らのような強豪国の選手たちと比べるのが間違っているかも知れない。 だがドイツもイタリアも日本も枢軸国だ。 共に戦ったあの時代と同じようなスタイルを、彼らはピッチ上で表現しているのではないだろうか、と常々思う。 ナショナルチーム同士の対決を、国際的な「代理戦争」と云う人たちがいるがそれはあながち間違いではないだろう。 サッカーの起源(諸説あるが…)はそもそも争い事から生まれているし、町や都市間での戦争が競技へと形を変えていったものである。 つまりサッカーは戦争だ。 翻って考えると我ら日本代表はどうだろう。 日本らしさ、と云われても返答に困る。 自分たちのライフスタイルも、誇るべき文化も、目指すべき国家像すら見えてこない。 当然、サッカーでも「これが日本だ!」というものを作り上げるのは容易ではないだろう。 一スポーツであるサッカーをナショナリズムに結びつける事には大きな声で反対だと云いたいが、まったくの無関係でいられないのも事実。 (ただし愛国心や日の丸という言葉をサッカーとリンクさせたがる人間は嫌い) アイデンティティなる横文字を見るたびに、そんなものがこの島国にあったのかさえわからない俺がいる。 そこで協会やマスコミ、そして馬鹿な国民たちはこんな言葉を連呼して喜んでいた。 「サムライブルー」 侍とはそもそもなんだ? サムライの子孫だと言うが、大抵の日本人は士農工商で云えば農民の子孫のはずだ。 だから俺は今大会の選手たちを 「ノウミンブルー」 とひとりで呼んで悦に入っていた。 特に深い意味はない。 no mean なのだから。 北朝鮮のミサイル発射、に影響されて書いたわけではないが時期が悪かったね… 元々ドイツ-イタリア戦という事で枢軸国に絡めたネタを書こうと思っていただけ。 日本のお話2。 日本のマスコミはファンタジスタという言葉を簡単に使いすぎ。 上手い選手=ファンタジスタではないと思う。 中田英寿や中村俊輔や小野伸二たちがファンタジスタであろうはずもない。 ファンタジスタの定義、というものは発祥の地でもハッキリとしていない。 イタリアではゲームを一発で決めるような決定的な仕事をできる攻撃的なMF(もしくはFW)を指す場合が多い。 だが個人的にはファンタジスタというのは、 「ファンタジックなプレイを魅せて、その上で何かを成し遂げる選手」 だと思っている。 なので上手くても何も勝ち取れない選手はファンタジスタではなく、只のテクニシャンだ。 その言葉がピッタリあてはまる選手はマラドーナやロベルト・バッジョ、現役ではジダンやロナウジーニョクラスの事だと思う。 各Jチームやそれこそ高校のサッカー部にさえファンタジスタが多く存在するこの国は、きっと100年経ってもワールドカップを手にする事はない。 本物を見抜き、偽者を見破れる人間たちが増えない事にはね。
by rx-77-2cannon
| 2006-07-05 00:00
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